エアプのグルメ

宇田。

 

料理というのはまさに人間の営みそのものである。生の半分と言ってもいい。

人間の持てるすべての叡智、あらゆる将来への投資、喜びへの渇望、これをすべて集めて二で割ったものがそのまま料理への情熱として竈にくべられる。

例えば石器の発明、火の発見、宗教の発生、銃、病原菌、鉄、そしてインターネット。真実。ユヴァル・ノア・ハラリやジャレド・ダイヤモンドが大量の飯を食って考えた人類の根幹たる文明の要素、これらのきっかり半分は料理のために注ぎ込まれる(そして彼らはその考察でまた飯を食う)。

それでもう半分は、セックスに投じられる。

 

さておき、このレポートは第4回深夜の真剣レポート60分一本勝負「嘘」に寄せて書かれたものとなる。 本稿で論じる「嘘」とは、インターネットに蔓延する偽物のレシピ、エアプのグルメである。

インターネットを信じるな

素人写本の巨大中古書店たるインターネットには、多種多様の料理レシピが存在する。

そのうちのほとんどは単なるプロの仕事のコピーなのだが、中には大量の仕事を誤って参照してしまったがために作業ラインが輻輳し、コピーエラーとパケットロスで満ち満ちた失敗作も存在する。

あなたが望むなら、昨日私の腸環境をさんざ荒らしまわったのちに下水道へと手を振って去っていった、生焼けのジャガイモを使う珍しい料理のレシピをここに提示したっていい。私だって作ってみるまでそんな料理がまさかあるとは思いもしなかった。

 

ところで、インターネットのレシピのたいていは、大鍋で作ってみたり、悪魔崇拝を教唆してみたりと、進化論的に磨き上げられた物珍しいものに惹かれる人間の本能(上の二人のどちらかがきっとそれについて書いているはずだ)を刺激して、食材を文明のくびきから解放してやろう、という野心に満ちたレシピだ。

あなたがもしその物好きで浪費癖のある本能を御しきれず、かつ本能がエロスしか取り柄のない役者崩れのレシピに魅入ってしまっていた場合は、あなたの腸管はあなたの腹膜をビンタし、肛門の新陳代謝の収支は崩れ、次の日は便器と仲良くする羽目になるだろう。

それを恐れるなら、次の項目を覚え、インターネットでレシピを見かけるたびに大声で叫ぶといい。

  1. 根菜には合計20分火を通せ!

じゃがいも、玉ねぎ、にんじん、こういった陰気で頑固で内弁慶な奴らの性根をしっかり叩き直さずに体内に入れると、歯に歯向かい、喉に物申し、そして胃腸ではしゃぎ回り、メゾン肉管から速やかに叩き出されることになる。

彼らの親御さんから彼らを預かった以上、あなたはただ彼らの将来のために、彼らの生意気さを正してあげねばならない。

  1. 水は入れろ!

無水調理というものはいかんともしがたい。素材本来のうまみが出るだのなんだの言うが、そんなのは全くのまやかしである。

基本的にはマジで水は入れた方がいい。熱の通りを均一にするためだ。

さもなくば根暗の根菜どもがあなたの料理を学級崩壊に導くこととなる。

おしまい

レシピは本を買え。 せめて白ごはん.comfoodie, あとはDELISH KITCHENの「基本の○○」シリーズを参考にしろ。

TwitterとYouTubeは信じるな。

付録

ついでにおれのメモっているレシピをいくらか掲載しておくが、決して信じてはならない。

豚の生姜焼き

材料

名前分量
豚肉400 g
30 mL
みりん45 mL
醤油30 mL
チューブしょうが15 cmくらい
チューブにんにく1 絞り
塩こしょういくらか
玉ねぎ小さければ 1 玉

手順

  1. 肉の片面に塩こしょうを振る。思ったより多めに振る。
  2. それ以外の調味料を全部混ぜる。
  3. 玉ねぎを適当に切る。
  4. フライパンに油を入れたり入れなかったりして、焼き目がつくまで肉の片面を中火で焼く。
  5. 肉を裏返し、玉ねぎを入れて肉の赤みがだいぶなくなるまで適当に炒める。
  6. 調味料を投入する。
  7. 調味料になんとなくとろみが出るまで炒める。その頃には、玉ねぎが透き通ってきているはずである。
  8. 火を止めて皿に盛り付ける。
  9. 完成。

鳥の甘酢照り焼き

材料

名前分量
鶏肉800 g
片栗粉適度
醤油15 mL
15 mL
ソース
名前分量
玉ねぎ0.5 玉
おろしニンニク10 g
醤油30 mL
みりん30 mL
30 mL
砂糖15 mL

手順

  1. ソースを作る。
    1. 玉ねぎをみじん切りにする。
    2. 耐熱容器に入れて電子レンジで500W 2分温める。
    3. ソースの材料を全て入れて混ぜる。
  2. 肉を調理する。
    1. 鶏肉を1cm厚にスライスする。
    2. 醤油と酒を揉み込み、片栗粉をまぶす。
    3. フライパンに並べ、焦げ目がつくまで両面を焼く。
    4. ソースを入れて、照りが出るまで炒める。
  3. 完成。

2024-11-02, 書いた人: 宇田